いっしょに生きよう - 死にたいあなたへ
嘆き川柳 お絵かき掲示板
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無題


階段を降りる1つの影。髪の長い女性のようだった。女の手には大きな鉈が握られ、不規則に血の雫を落としていた。

地下室へと近づくに連れ、口鼻を抑えたくなるような臭いが漂った。それでも、彼女はそれを全く気にしない。

一番下まで降りると、地下室の扉をそっと開ける。中は真っ暗でよく見えない。

女は地下室の中央まで歩いた。そこには男が仰向けに倒れていた。

女は泣きそうな表情だった。

「...どうして」

女がぼそりと呟く。男はなにも言わない。

死んでいるようだ。

女はポツポツと涙を落とした。

「...なんで、なんでなの。貴方の愛すべき相手は私じゃないの?」

女はそう言って男のそばに泣き崩れた。肩を震わせている。

やがて、女はゆっくりと立ち上がった。

「...貴方はあの女のものじゃない。私のもの。全部、全部、全部全部全部全部全部全部!」

女は狂ったように男の腹に鉈を振り落とした。何度もなんども。男の腹から臓器が見える。

女はその臓器を腹から引きずり出す。そして、泣きながら抱きしめた。

「貴方の臓器も私のもの。胃も腸も腎臓も膵臓も名前も知らない臓器だって...私は愛せるの」

女は抱きしめていた臓器を床に置くと、次の臓器へと手を伸ばす。

「ほら、ほら、これも!これも!これも!」

男の腹からどんどんと臓器が零れ落ちた。そのまま、女は男の腹に手をいれた。

「ねぇ、わかる?この助骨だって、中の心臓だって...私にとっては大切な貴方なの。それなのに、貴方は...くだらないあの女に、その身体を捧げちゃって」

女は男の助骨を握り、力を込めた。グググ...と骨が軋み、折れた。

「あは、あはは。でもあの女に"心"は取られていないわよね」

女が心臓を鷲掴む。心臓はもちろん動いていない。温かみもない。冷たい。硬い。

「あ...あぁ...」

女は血管を引きちぎり、心臓を手に取った。

「大好きなの。愛しいの」

女はそのまま、ぐちゃぐちゃになった男の臓器の上に倒れ込み、幸せそうに目を閉じた。
16/03/11 20:45更新 / kaD

■作者メッセージ
痛み入ります。

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