いっしょに生きよう - 死にたいあなたへ
嘆き川柳 お絵かき掲示板
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先生
先生は職員室が大嫌いなのでいつも美術室にいた

私はそんな先生を部活動を口実に

内緒でキャンパスに描いていた

夕日を浴びながら禁止されているタバコをふかして

物憂げに校庭を見ていた

自分の居場所はここじゃないと嘆いているようだった

先生には生徒のいじめも先生同士の派閥も同じように思えていて

学校というせまい枠にはおさまりきらない大きな夢をもっていた

ほかの先生も生徒も先生を変人だと決めつけ笑いものにしていたが

私はそんな先生が大好きだった

「早く帰れよー」とたいして興味もなさそうに

私に言う先生の横顔に色を塗っていった



卒業式の日私は先生に自分の絵を渡した

先生はやはりめんどくさそうに

「俺に?………どうも」

と言ってちょっと口の端を上げた

ほかの人にはわからないだろうが

1年も先生を見てきた私はそれが先生の

精一杯の笑顔なのだと知っていた

私が先生の背中に「さよなら」と言うと

先生は私の絵を小脇に抱え

ふりかえりもしないで手をあげた


私が新しい生活をはじめ、慣れてきたころ

アメリカからハガキが送られてきた

先生からだった

なんでもあのあと学校をやめて

絵を描くために世界一周の旅に出たらしい

ハガキの写真には先生はうつっておらず

知らないアメリカ人のおじさんと犬と

壮大なグランドキャニオンの景色があった

恥ずかしがりの先生らしい

そんな数行ばかりの近況報告とともに

最後のほうに「絵みたぞ」とだけ書いてあった

ハガキの端っこがタバコで焦げていた


14/08/17 18:08更新 / イカ耳

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