いっしょに生きよう - 死にたいあなたへ
嘆き川柳 お絵かき掲示板
読切小説
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3/3(三分の三)
隣のクラスの吉岡という女子生徒は俺たち二学年内ではトップクラスの美少女だ。特に突飛とした活躍はないのだが、それが俺たちと同じレベルなんだろうなぁという親近感を感じてしまう。まぁ誰でも手が届く位置に彼女がいるということだ。
俺こと新村、クラスメイトの橋本と杉下は昼休みが始まった直後近くの男子トイレに集合した。
「いいか、お前らとは今日決着をつける」
「ああ」
「別にいいけどさ…」
俺たち3人は皆吉岡に好意を抱いている。今まで出し抜きはしないかと牽制状態だったがこのままではこう着状態が続くだけなので、こうやって直接対決に持ち込んだというわけだ。
「それで、勝負って何?喧嘩以外で頼む」
「腕相撲とかでいいんじゃない?特に疲れないし」
橋本と杉下がそれぞれ言ってくるが、そんな言葉に対し俺は何を腑抜けたことを、とふんぞり返ってみせた。
「ここはもう直接吉岡に告白するしかねぇだろ」
「「は?」」

「吉岡さん!」
「え?」
廊下で呼び止められた吉岡はその声の主を見る。
「あ、えと。隣のクラスの杉下くん?」
「そ、そうで…そうだ!」

階段の踊り場に隠れて俺と橋本は杉下が告白するところ見ていた。
「仕組んだように廊下には二人以外誰もいねぇや」
「そういうタイミングを見計らってたんだろが、もう昼休み終わっちまうだろ」
先ほどの男子トイレでのやり取りの後すぐにじゃんけんをして告白する順番を決めた。勝った方から告白していくというルールの元、最初に告白するのは杉下ということになった。
「お前は女子相手だと口がごもるだろ?俺から行ってやってもいいんだぜ?」
「いや、ここはちゃんと俺から行くよ。せっかく勝ったんだし」
乗り気なのかそうではないのか、杉下は普段から覇気があまり感じられないのだ。そこで俺はこう提案した。
「強気になっていけ。相手に押し負けないように常に強気な態度を取るんだ」
「…俺、クールでおとなしいってイメージで通ってるんだけど」
「吉岡を彼女にできることに引き換えれば大した問題じゃないだろ?」
「まだ彼女にできるか分かんないのに気の早いこと」
そういって3人で階段の踊り場で待ち伏せして吉岡が廊下に現れるのと近くに誰もいなくなるタイミングが合い重なって今に至る。
「それにしてもさ新村。あの追加ルールちょっとえげつなくね?」
追加ルールとは3人それぞれの特技を見せるというもので、杉下は格闘系、橋本は音楽系、俺は雑学というか主に本について語る予定だ。しかし杉下の場合体を思い切り使う上にあのおとなしそうな吉岡相手ではむしろ逆効果な気がする。
「…まぁ、ルール変更は後でできる。吉岡の反応を見てからでもな」
「…杉下は生贄か」

「吉岡さん…あの、見てもらいたいものがっ」
「ん?何」
杉下はおもむろにベルトを抜き始めヌンチャクを構えるポーズを取った。そしてぶんぶん振り回し始めた。ベルトをヌンチャクと見立ててぶんぶんと。
「ホアッ、ッタァ、フンッ、フォガァァアーーーー!!!」
ただただ振り回していた。きっと杉下の考えている演出はブルース・リーのようなカッコいいヌンチャク捌きを考えているのだろうが…体がおいついてないぞ、杉下。
そして最終的に─。
「ガッ!?」
ベルトの固い部分が顔面にぶつかり悶絶。吉岡はオドオドしながら杉下に近づいたが、教室から出てきた友人に声をかけられ教室に戻ってしまった。

「…もうこのルール無しで」
「賛成」
「反対」
再び男子トイレに戻ってミーティング。
「俺がやったんだから、お前らもやれよ」
「いや、でも発案者である新村が止めるっていうんだから─」
「そもそもルールなんだから、やれよ」
「今俺がそのルールを無くしたろう?もういいだ─」
「や・れ・よ」
…空気が死んだ。
「ま、まぁ次は俺の番だ」
橋本が声を出した。
「もう昼休みは終わっちゃうから、五時間目終わった休み時間でいいだろ?」
「あぁ、ただ授業終わったばかりだから人いっぱいだぞ?」
「大丈夫だ、五限は選択科目で吉岡さんは家庭科で裁縫…だったけかな?まぁ特別教室棟なら人はそんないないだろ」
「じゃあお前は授業終わったら即ダッシュで特別棟行け。俺と杉下が後を追っていく。あと、なんで人の選択科目知ってんだお前」

五限終わりの休み時間、俺は橋本の後を追って特別棟に来ていた。今回も階段の踊り場で様子を伺おうとしたが、当の本人の姿が見えない。
「しかし、杉下のヤツ遅いな」
「吉岡さん!」
ふと橋本の声が聞こえ家庭科室の方を見る。どうも教室の中から声が聞こえてくる、吉岡が片づけとかで遅くなってしまったようだな。
教室の引き戸の前で中の様子を伺う、今まさに橋本が吉岡に告白しようとしていた。
「あの吉岡さん、あなたに言いたいことがあります」
「何?別に同じ学年だから敬語じゃなくてもいいんじゃ?」
「いえ、こういう時は敬語でいかせてもらいます」
別に敬語じゃなくてもいいだろう?俺もそう思うぞ。
「こういう時?」
「あ、いえ!別に大したことじゃないです」
杉下よりお前のほうが上がり症だったんだな…。
というかその杉下はいつになったら来るんだ?

それは突然現れた。家庭科室の掃除用具入れロッカーからバケツをかぶった人間が現れたのだ。
そしてバケツ男は橋本を指さしてこう言う。
「お前、邪魔だ」
そういって橋本に襲い掛かる!
「な、なんだコイツ!?気持ち悪ぃ近づくな!」
「やだ。お前、許さない」
「あ!?ってお前、杉し─」
「フンッ」
橋本はバケツ男に顔をおさえられてその後の言葉が続かなかった。そしてバケツ男は橋本にコブラツイストやパイルドドライバー、そこらじゅうに振り回されては万地固めにされた橋本は抗う気力を失いかけ、そこでバケツ男の猛攻は終わった。
「あぁ、気が済んだ」
とバケツ男は踵を返し教室を出ていった。扉の前で様子を伺っていた俺と鉢合わせになったが、数秒間見つめられた(?)だけで特に変な事はされなかった。
「橋本〜。教室戻るぞ〜」
「…」
反応がない、ただの屍のようだ。
家庭科室には橋本の無慚な姿だけが取り残された。そして当然のごとく吉岡はすでにいなくなっていた。

ラストは俺だ。じゃんけんで負けてビリっけつになった時は他の二人に取られるのではないかと心配したが杞憂だった。そして幸いにもこの局面で放課後という一番何か起こりそうな時間帯に俺が告白する、これはなにかあって当然だろう。
「で?杉下どうすんの?」
「なんか顔とか全身とか痛いから、もう帰る。それに勝負にはもう負けてるしさ」
そう言ってカバンを手に取り帰って行った。橋本は保健室に連れていかれたままだ、六限にも顔を出していない。
少し寂しい気もするが、単独での出陣となった。

吉岡は以外にも帰宅部なのだ、その日の授業が終われば友人と雑談することもなくまっすぐ帰路につく。
俺はひたすら吉岡の後をつけた、本人はもちろん周りの一般人からストーカー行為と感ぐわせないよう繊細に行動した。すれ違ったお巡りさんに不信がられ呼び止められたが、前を歩く同級生を追っている。忘れ物を届けている最中だと説明しなんとか逃れた。
そして吉岡は学校近くの河川敷へと足を運ぶ。

階段を上って吉岡の姿を探そうとしたが、すぐに見つかった。
「新村君、私になにか用?」
目の前にいたのだ。どうやら気づかれていたらしい、お巡りさんに呼び止められた時に気づかれたのだろうか。
「あっと、えっと…な。吉岡に話がな─」
「やっぱりね。今日は杉下君にも橋本君にも呼び止められたんだ、いつも二人と仲のいい新村君がいつかくるだろうと思っていたよ」
「それは、どうも…」
吉岡は俺たちの行動を不快とは思っていなかった。むしろ俺がいつか呼び止めにくるだろうということもで察知していたとはな。
「じゃあ、えと。俺は吉岡に言いたい事があるんだ」
「うん」
「その、なんだ。一目ぼれっていうのかな。ハハッ、その吉岡を初めて見た時にな、その俺の第六感というかシックスセンスがこう…ビビッときてだな。そんでもって俺がな…えと─」
「もう、単純に表せばいいじゃない」
吉岡がフォローを入れる。まさかこれから告白する相手にフォロー出されるとか!俺って情けねぇ…。
「その、好きです。好きになりました。えと、付き合ってください」
さぁ、俺の人生初告白の結果は─。

「うん、ありがとう。うれしいよ」
「!!」
「私今までそういう事面と向かって言われたことなかったんだ。だからホントにうれしいんだ」
「じゃあ…!」

「でも、ごめんなさい」

吉岡は深々と頭を下げた。
え?ちょっと待て、俺の告白に対してありがとうって。うれしいって。なんでダメなの?
「なんで、ダメ?」
「新村君私に一目ぼれしたのって、いつ?」
唐突に吉岡が訪ねてくる。
「え?えと、この2年になった春かな。もう半年近く前になるね」
「そう、じゃあ部活やってた頃の私を知らないのか」
そう言った瞬間、オレンジ色の光が俺たちを照らした。
夕日がとてもまぶしかった。吉岡の後ろに昇った夕日は良い感じに逆光となり吉岡を美しく照らしていた。
「綺麗でしょ」
「うん…」
「私、部活やってた頃は毎日午後6時とか7時くらいでさこんな風に夕日の照る時間に帰ったことなかったんだ。中学の時も同じようなかんじでね、小学校の時は多分見れたと思うけど覚えてないんだ」
そう言いながら歩き出す。
「やりたいことができたんだ。部活辞めたのはそのせい。今はそのことに専念したいから…告白は受け入れられないかな」
「そうか…」
きっと強い意志を持ってそのやりたいことに打ち込みたいんだろう、そう思うとぬけぬけと俺が立ち入るのも無碍な話だ。
「じゃあダメってことか…」
「そういうこと。まぁあえて言うなら、今の彼氏はこの綺麗な夕日ってことで」
「曇りの日とか雨の日とか、毎日は見られないのに?」
「そうだよ。けどこんな晴れている日はとても最高な笑顔を見せてくれるんだ」
夕日の輝きを笑顔に例えるところが吉岡らしいな。
「あのさ」
「ん?」
「やりたいことがなんなのかは知らないけどさ、がんばれよ」
「…」
「絶対諦めんなよ、応援するからさ。…陰ながら?」
言って後悔してしまった。何でここで疑問形で言ってしまった俺!?
すると吉岡はとびきりの笑顔でこう言った。

「今、私の彼氏が夕日じゃなかったら新村君の告白を受け入れてたと思う」

「は!?マジで」
「いや、やっぱ無いかな。じゃあまた明日!」
そう言って笑いながら再び帰路につく吉岡。
「はぁ俺のバカ。何で夕日が出てる日に告白してしまったんだ、もしかしたら夕日が出てないことで俺の告白を受け入れたかも─」
「そういうことじゃねぇだろ」
ふと後ろを振り向くと橋本がいた。その後ろには杉下も。
「どうやら、この勝負はみんな負けたようだな」
「俺はベルトで負けた上にベルトで恥かいたぞ、割りに合わん」
「…そうだな」
俺たち3人は向かい合う。今回の事でそれぞれが踏ん切りいっただろう、これからは腹を割って仲良くでき─。

「っていうかまともな告白したの新村だけじゃん」

と橋本が指摘して俺の背中を強く叩く。
「全くもってその通りだ、第一お前がヘンなルールを作らなければな…!」
杉下も橋本に負けんばかりの力で俺の背中を叩きまくる。
「痛いって!止め止め!俺は告白したけど、結果は残念だったんだからな!」
「ふん、つまりお前はもう一度告白しても結果はNOということだ。俺らはまだ告白すらしていないから結果がどうころぶかは分からない。そうだろ杉下」
「あぁそうだ」
「というわけでお前は吉岡争奪戦からは外れということで─」
「ふざけんな、俺だってもう一度気持ちを落ち着かせてから告白してやるつもりだ!」

どうやらまだ、俺たち3人は争うことになりそうだ。
15/03/31 19:00更新 / チョータ

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文字数4500超えです。

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