いっしょに生きよう - 死にたいあなたへ
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人魚と少女
ある日私が泳いでいたら、浜に可愛らしい少女と少年がいた。
二人は一緒に砂のお城をつくっていた。
砂まみれになりながらとても楽しそうに笑っていた。
私も混ざりたかったが、驚かせてしまいそうなので我慢した。


翌日、また二人はやって来て鬼ごっこをしていた。
砂に足をとられて転び、転んだ少女につまずいて少年も倒れこむ。
二人は一瞬顔を見合わせて笑った。


そして次の日も、また次の日も、二人はやって来て暗くなるまで遊んでは帰って行った。
私はずっと岩の影から覗いていた。

そしていつの間にか私は、少女に惹かれるようになっていた。同性に恋なんて気持ち悪いな、私と思いながらもずっと見つめてしまっていた。



今日は遅いな……なんて思いながら泳いでいると少女が一人でやって来た。
どうして一人なのだろう?いつも二人だったのに。

少女は泣いていた。
子供らしく声をあげて泣くのではなく、静かに涙を流していた。


その小さな背中を何もせずに見ているなんて耐えられなかった。

気付いたら少女を抱き締めていた。
少女は赤い目を見開いて驚いていたが離さなかった。

細かい砂が鱗の隙間に入り込み、太陽の光が私を乾かす。人魚の私には少女の肌は熱すぎる。
少女に触れ、火傷した私の肌に砂がくっつきヒリヒリした。

だけどそんなことはどうでも良くて、ただ少女の事だけを考えていた。

何故泣いているの?と聞くと、少女は再び泣き出した。
少年が事故で亡くなったらしい。少年とはずっと小さな頃から一緒にいた友達だったという。きっと幼いながらも少し恋心を抱いていたのだろう。

二人で泥だんごをつくった、二人で砂の城をつくった、二人で鬼ごっこをした、二人で絵を描いた、二人で勉強した。少年との思い出を一通り語り終わった頃には日が暮れていた。

私はやっと泣き止んだ少女の背中を撫で、もう遅いから帰りなさい、と言った。
少女はうん、分かった、ありがとうお姉さん、と言って走って去って行った。

私は少女が帰ったあとの砂浜を這って戻り、海に入った。
海水は火傷にしみて、とても痛んだが、その痛みさえも愛しく思えた。





次の日から少女は来なくなった。
やっぱり驚かせちゃったかな、と思いながらもずっと少女を待った。


そして、少し大きくなった少女が海に来た時には私の顔には深い皺が刻まれ、美しく輝いていた鱗はぼろぼろになっていた。
人魚の寿命は人間よりもはるかに短いのだ。

美しく成長した少女は、何かを探す様に周りを見渡していた。
私を探していることは分かったが、老いた姿で少女の前に出られる筈が無かった。

大好きな少女に醜い姿を見られたくないし、きっと私だと分からないだろう。





私は少女の姿をしっかりと目に焼き付けてから静かに海に潜った。

昔の火傷は痛まなかった。
14/09/14 11:40更新 / shin

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