いっしょに生きよう - 死にたいあなたへ
嘆き川柳 お絵かき掲示板
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廃道の廃車
僕は、ある旧国道の転回所に停車している。
ここに停まったのは今から18年前の事だ。僕の運転手だったお兄さんは新車を買って僕が必要なくなった。僕の処分に困ったお兄さんは僕をここに乗り捨ててどこかに消えて、それっきり戻っては 来なかった。 この18年で僕や僕の周りの景色は大きく変わった。18年前はまだこの国道が現役で少ないながら時々車が通っていたが、17年前に大雨で大規模な土砂崩れが発生したのをきっかけにこの道は通行止めになり、新しくバイパスが出来た事でこの道は完全に廃道化した。 人の手が入らなくなると道路というのはすぐに自然に還るものだ。現在では、道路には落ち葉がつもり、所々から草が生えている。10年前までは辛うじてアスファルトが見える場所もあったが現在では完全に草や土に埋もれている。
こんな状態なので、僕もどんどん朽ちて行った。シルバーの車体は錆びてボロボロになり、綺麗だった窓ガラスも全て割れてしまった。車内には割 れた窓から入り込んだ落ち葉からキノコが生えてしまっている。 そして、挙句の果てに車全体にツタが絡み付いてしまっている。
僕が車として道路を走ることはもう二度とないのだろうか?
一台の廃車は誰も来なくなった静かな廃道で考えていた。
私はこの廃車にとって一つの残酷かもしれない事実を教えてあげることにした。「君はおそらくもう二度とここから出ることはできないし、道路を走ることはないよ」 私のこの言葉を聞いた廃車は目を見開いた。そして、泣き出した。
風の音以外、音がしなかった廃道に一台の廃車の泣き声が響いた。
私は廃車をもう一度じっくりと見つめた。エンジンがあったはずの位置に開いた大きな穴、割れたガラス、どこかに転がっていったのか見当たらないハンドル、やはりこんな状態では道路を再び走ることは二度とないだろう。 私は廃車に「また来るよ。」と言い残して、その場を後にした。
16/03/17 23:50更新 / 亜樽

■作者メッセージ
ローカル電車や放置された自動車の感情がある世界を考えるのが楽しくなってきた
ちなみに小説中の「僕」は廃車、「私」は廃道探索に来た人間をイメージしました

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