いっしょに生きよう - 死にたいあなたへ
嘆き川柳 お絵かき掲示板
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ドクダミとタンポポ
本屋さんであの子に会った

日に当たると透き通って茶色になる髪を

しばらないでそのままにしていた

ゆれるたびにサラサラ動いた

小さいころつれてもらった競馬場で見た

栗毛の馬のおっぽに似ていた

あのころはお父さんもお酒やパチンコを

やりすぎないでいたのに

いつ歯車が壊れてしまったんだろう

あのころはお母さんもいたのに

いつ出て行ってしまったんだろう

昔おかあさんにだっこされたとき

おかあさんの体に顔をうずめると

すごくいい匂いがしたな

さっきあの子とすれちがったとき

あのときと同じ匂いがした

僕はあの子を知っているけどあの子は僕を知らない

いつも廊下ですれちがうけど

あの子の周りにはいつも人がいて

とうてい近寄れない話しかけられない

プールの授業の後の濡れた髪が素敵なのに

授業が終わった後の背伸びがとても色っぽいのに

僕はただそれを見ているだけ

いや一度だけあの子が僕を見てくれたことがあったっけ

放課後の体育館の裏

じめじめして暗くて嫌な雰囲気

足元にはドクダミしか生えていない

僕にいつもひどい言葉を言う人たち

僕はうつむいて足元のドクダミを見つめていた

ドクダミは臭くて嫌われる

おまえといっしょだろってその時言われた

ぼくはドクダミ好きだけどな

お茶にもなるし傷薬にもなる

僕はふと横を見た

数人の女子が楽しそうに会話をしながら歩いていた

あの子もいた

僕は息が止まった

あの子と僕の目が合う

永遠に時が止まったように思える

あの子は微笑みを口に浮かばせながら行ってしまった

ぼくはまたドクダミを見つめた

あの子の透き通った声がかすかに聞こえた

「私ドクダミって苦手なの タンポポが好きよ」

僕はその帰りタンポポを摘んで帰った

家にあった瓶にさしてみた

アブラムシがわいてタンポポはしなっとしてしまった

タンポポは日向に咲いてこそ美しいのだと

ドクダミはどこに咲いても一緒だと

なんとなくそう感じた



本屋には夕暮れの空気が漂っていた

もうすぐ夏が終わる


14/08/17 18:48更新 / イカ耳

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