いっしょに生きよう - 死にたいあなたへ
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rainbow






赤、オレンジ、黄、緑、青、藍、紫。




綺麗に七色に輝くソレは、
幼かった僕にとってはまるで夢のような、
あるいは空へ続く道のように思えた。



視界いっぱいに広がるその光景に
僕はすっかり染まっていた。



空に行きたかった訳じゃない。
ただもっと近くで見たい。
もし出来るなら触ってみたい。

そんな考えだっただろうか、
子供らしいふわふわとした足取りで
僕は思うままに走り出していた。



本当は一直線にかけて行きたいのに
目の前のくねくねとした道が煩わしかった。

右に曲がったかと思えば次は左。
分かれ道に行き止まり。
いつの間にか、僕は走ることだけに集中していた。





…どのくらい走っただろうか。


ふとした瞬間に足が止まった。





気がつくと小高い丘のてっぺんにいた。
思っていたほどには息はあがっていなかった。

自分が住む街にこんな所があったのか、と
半ば感動していたように思う。




何の為に走っていたかをようやく思い出した僕は
その場でゆっくりと回ってみた。


でも、もうソレはどこにもなかった。
右も左も、見えるのはオレンジ色の空だけだった。




なんだか物寂しく感じた。
きっとソレが見れなかったからだと言い聞かせていた気がする。




少し肩を落としながら帰ろうとしたその時、
太陽の光に反射する何かを見つけた。


拾ってみると、それは虹を象ったキーホルダーだった。
ついさっきまで僕が追いかけていたものだった。




少なからずの縁のようなものを感じた。

誰かのものなんだろう。
そうも思ったが、キーホルダーを捨て置くことは出来なかった。




結局、僕はその日の冒険のような体験を
キーホルダーと共に記憶の片隅に留めていたのだった。













思えば不思議だった。
そんなある意味どうでもいいような事を覚えていたのは。





「あの…ご職業は何を?」

『一応、――で教師を。
まだまだひよっこですけどね』

「あら…?
偶然ですね。私そこに住んでたんです」

『えっそうなんですか?
僕は生まれも育ちもそこなものですから』

「そうでしたか…。
ということは実はどこかで会っていたのかも知れませんね」




そう言って彼女は微笑んだ。
成る程確かに、どことなく懐かしくもあった。




「懐かしいわ。…そういえば…。
昔、いつ頃だったかしら、とっても綺麗な虹を見たんです」

『へえ……えっ?』

「今になっても忘れられません。
当時母が買ってくれたキーホルダーも一緒に持って行ったのですが…。
同じ虹のキーホルダーでした、確かなくしちゃったんだっけ」





彼女の言葉を聞いた瞬間、記憶の引き出しが開かれたように思えた。
片隅にあったものが次々と姿を表していく。





虹を追いかけたあの日。
丘に行ったあの日。
結局追いかけきれなくて、夕日だけを眺めて。
そして―――――





僕はまた、しかし今度ははっきりとした縁を感じた。
どうして覚えていたのかが分かったような気がした。



胸にじわりと温かいものが広がった。











『…あの、実は――――』














14/12/14 20:40更新 / 秋霧

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