いっしょに生きよう - 死にたいあなたへ
嘆き川柳 お絵かき掲示板
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不良と妖怪
ある街に、さほど有名でもない蔵魏(くらぎ)高という、
名前の珍しい古い高校があった。
その高校には、唯一、不良がいた…。

その不良の名は、公島 創太(きみしま そうた)。
創太は、頭は悪く、運動力は抜群…という、いかにもありがちな不良であった。
放課には必ず屋上へ向かい、
授業が始まっても、戻ってくるとか、こないとか。

(授業やるのかやらないのか、はっきりしろっ!!)
真面目な者ならそう叫びたいぐらいの奴だ。
…そんな奴でも、

所在は誰もが知っている、有名な不良高。
意味もなく暴れまわり、壁に堂々と極悪口、不相性な相合傘描き殴ったり、
授業そっちのけで、強者を求めケンカにあけくれる。
という、…そんな不良よりはずっとマシである訳で。

迷惑をかけない程度だからいいものの、
クラスではとりあえず、「近寄りがたい存在」であった。

そんな不良、創太はある日、
「普通の人には見えないもの」に出会う。


…事件は、清掃の時間に起こった。
「っしゅー…。」
創太にとって清掃の時間とは、筋トレの時間であった。
壁を蹴ったり、殴ったり。(ひび割れない程度に。)
もちろん、人気のない場所でやっている。

今日も、いつものようにそんな変な筋トレをやっていると。
「おい。」
後ろから突然声がしたので、創太は後ろを振り返った。

「………。」
しかし、そこには誰もいなかった。

気のせいかと思い、筋トレの続きをまたやりはじめる。
すると、また、「おい。」と声をかけられた。
だが、後ろに人の気配などは感じない。
創太は不審に思ったが、無視して筋トレを続けた。

するとその声の主は、
「お前の耳は、何処にある?」という質問を投げかけた。
この質問に、カチンときた創太は、

「…誰だぁ?、でてこい!!」と怒鳴り声を出し、後ろを振り返った。
しかし、またもそこには誰もおらず。

声の主が、「お前の目の前にいるよ。」と、意味不明な言葉を言ってくる。
「はぁ!? 馬鹿いってんじゃねーよ。」

確かに、その声はまるで目の前にいるかのように近かった。
その言葉が本当なのなら、人に見えない奴がそこにいるってことになる。
それは現実としてはありえない。

「ケケケッ…。お前には俺が見えないのか。」
何とも不気味な笑い声をして、その声の主は馬鹿にするように問いかけてきた。
…創太は、呆れた。

「『妖怪ごっこ』か?、最近はやってるしなー。」
「…!」
「何がそんなに面白いのかわかんねーけど。」
「……」
「俺、今トレーニングしてんの。他の奴ならノってくれるかもだから。」
「………」
「『ごっこ』はここじゃ危ないぜ。…ほら、さぁ! 帰った帰った!」

創太は小学生にでもいうような感じで、声の主にさらりと言い。
また筋トレを再開しようとする、が。
「やれやれ、…いつの時代になっても人間は俺らの存在に鈍いもんだね。」
声の主はまだそこにいた。

「『ごっこ』じゃないぜ、人間。…馬鹿にはしてたが。俺は本当の…『妖怪』だよ。」
ボン、といきなり創太の目の前で煙が舞い上がる。
「うぉっ!?」
創太は驚きながら、煙が出現したその場を避けた。
煙はあっという間に晴れ。
恐る恐る目を開けると、和の服を着た、色白の背の高い男が目の前にいた。

「………。」
「………。」

しばし沈黙が流れ、創太はやっと口を開いた。

「お前……。」
「………」
「『妖怪』?」
「…あぁ、その通り。」
「…『ようかい』?」
「あぁ。」
「『よ、う、か、い?』」
「…ん、馬鹿にしてるのか?」

「………。」
創太は驚きを隠せぬ表情のまま、黙りこんだ。
「まぁ、驚くのも無理はないだろう。『妖怪』だからな。」
と、色白の男…いや。 妖怪はにやりと微笑する。
「『妖怪』…いや、やっぱありえねぇ!今のは、マジックだろ?…そうだろ!?」

創太は信じられず、その場でたじろいだ。
「信じられなけりゃ、またお前の目の前から消えてやろうか。…ケケケッ。」
男はそう言いながら、何かの構えの様な姿勢をとる。

「うわぁっ!?わかったからやめろ!信じるから!きえるな馬鹿!」
「おっ…、ひょっとして怖いのか?ん?」

「怖い!!」
創太は何されるか知ったもんじゃないと、とにかく構える。
「そうかそうか。」
妖怪の方は怖がられたことが嬉しく、面白しろいらしくて笑っていた。

「怖いっ…あれだろ?妖術とか使って、とりついたりするんだろ?」
「『妖術』、『とりつく』?…なんだそれは?」
構えをとる創太の問いかけに妖怪は不思議に首をかしげた。

創太は、妖怪の答えにさらにぎょっとした。
「えっ…じゃ、もっとおぞましいことでもするのか!?」
「いや、あのな…」

そして、創太の発想は、どんどんブラッキーなものになっていく。

「指を根元から一本残らず剃ったり!?」
「いや…」
「内臓を素手で取り出したりとか!?」
「あのな…」
「俺の命を…心臓もろとも、もらいに来たとか!?」
「………」
「俺を殺す気なら命がけでも逃げてやるぞ!!」

ヒステリーな創太の問いかけの勢いに、妖怪は困った様子で。
「待て、逃げるな、早まるな!…俺はお前を殺しに来たんじゃない。」
と、そう言って創太を何とか落ち付かせ。
「実はな、おまえに頼みがあってここに来たんだ。」

「俺は、この学校に住みついてるんだが…一人だと淋しくてな。」
「お、おう…。」
「話し相手になってくれる俺とおなじ者がいたんだが、他の場所に移ってな。」
「……」
「この学校はまじめな者が多すぎてつまらない。…だろう?」
「ま、まぁな…。」
「いつもここにきて、腹いせをやってるお前を見てると話しかけたくなってな。」
(…腹いせ…筋トレなんだけどなぁ。)

妖怪は先程とは違い、真剣な眼差しで、改まって創太に頼みごとをした。
「お前、面白いから俺の話し相手になって、人間のこととか、いろいろ教えてくれないか。」

(妖怪の話し相手に、俺が…?)
創太はそれに、うなずいた。
「は、話し相手か。…いいよ、さっきは悪かった。そうか…俺も淋しいときはあるんだよな。」

創太も、この学校では孤立していて。
真面目な奴、先生とそうでない奴。皆俺を不良としか見ずに。
大勢対1でその1が俺だった。
ダチもいないし、一日の間で少しでも淋しいと思うことが何度かあった。
妖怪が話し相手になるなんて変わってるけど。
何か面白そうだ。と、思った。

そしてこれから始まる創太と妖怪の生活は、誰も知らない。
…卒業まで、思い出に深く刻まれる、実に楽しい毎日であったという。
14/11/01 22:30更新 / 荒浪

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