いっしょに生きよう - 死にたいあなたへ Apocalypsis Day:自作小説 |雑談・ラウンジ - 悩み相談掲示板
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こころの悩み|悩み相談掲示板 > Apocalypsis Day:自作小説

Apocalypsis Day:自作小説

日時: 2015/09/30 21:06 ( dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

私の自作小説です。
暖かい目で見ていただけると嬉しいです。

見ていただく前に少しルールを。

スムーズな閲覧環境を整えるために、ここでの返信は控えて下さい。
アドバイス等がありましたら私のスレ
・・・? にお願いします。

更新は基本は一日更新、2.3本目安ですが不定期になることもあります。

レスタイトルに(改)が付いているものは、内容を補正しています。

最終更新から次の更新まで時間が空く場合は、ロックして置きます。

随時更新欄   最終更新:10/11
現時点の登場人物

山本翔平:放浪者。龍太、美玲の幼なじみ
坂口龍太
法川美玲
柳:国民党初代党首。独裁政権の首相。
前田友賀:日本リフォーミング・アース所長。

目次
Plorouge no.1
第一章 Diskrimination no.2~no.8
第二章 Irregularity no.9~no.19
第三章 Ordeal no.20~

備考:忙しくて2、3日に一つ更新になってきています

イエローページ

Page: 1 |

Plorogue (改) ( No.1 )
日時: 2015/09/30 21:35 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

 祝日の今日の東京は、いつもより人混みと騒音で溢れている。
電車の音、ショッピングモールのディスプレイから流れる音楽。
この日には、スーツを着ている者は誰一人見かけないのである。
この大都市の中には、国内最大のディスプレイモニターがあり、
その日の日付、曜日、天気やニュース、占い等のいろんな情報を
提供する、この国を代表するシンボルの一つとなっている。
このディスプレイは正午になるとアナウンスが流れる仕組みだ。
この日もそのアナウンスは流れた。

<6月24日 木曜日 正午をお知らせします>

辺りは暗闇を包む。

この星に太陽は、存在しない。

これは、三十年前の劣悪な環境にいる者達の、抵抗とその最期の記録である。
   メンテ
1-1 Diskrimination(改) ( No.2 )
日時: 2015/09/30 23:06 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

2075年、この国では上空から写真を取ると、貧富の差が映ると
言われている。壁一枚隔て、高級住宅街と腐食しかけのベヤニ板
で建てられた平屋の映る写真は、本当に民主主義国家なのかと、
見ると疑う程の物である。しかし、そういった状況に対するデモ
や抗議は一切行われていない。
それは、首相による事実上の独裁政権が長年続いているためだ。
当時新参の党の国民党の党首、柳の異例の首相就任から始まった
それは、短期間で日本を事実上の独裁国家に作り替えていった。
税率の底上げ、大手企業社員の優遇の他に、町工場や中小企業を
潰した為、放浪者が激増した。その中には子供も少なくなかった。
ただ、そういった者たちが次々死んでいくという事はなかった。
情けなのか、嘲りなのか、最低限の食料は配布され、重篤の場合
は診察を受けることが出来たためだ。
富豪層の人間は放浪者を嘲け笑い富豪層による事件も絶えないが、
国が動く事はないのだ。
これに抗議したものは次々と牢屋行き、その場で銃殺されること
もあるのだから、反抗する事もできない。

首相就任からわずか3年の間にこの国は差別主義の独裁国家と成り
果てたのである。
   メンテ
No.0に対する返信 ( No.3 )
日時: 2015/09/30 23:29 (spmode)
名前: 放置提督

> 私の自作小説です。
> 暖かい目で見ていただけると嬉しいです。
>
> 見ていただく前に少しルールを。
>
> まずこれは小説なので、スムーズな閲覧環境を整えるために、ここでの返信は控えて下さい。
> アドバイス等がありましたら私のスレ
> ・・・? にお願いします。
>
> 更新は基本は一日更新、2.3本目安ですが不定期になることもあります。
>
> 荒らし、なりすましはこないで下さい。
>
> レスタイトルに(改)が付いているものは、内容を補正しています。
>
> 随時更新欄
> 現時点の登場人物  最終更新:9/30
>
> 柳:国民党初代党首。
>
> 備考:特にありません。
こういう所に書くより占いツクールとの小説投稿サイトに投稿した方が見る人多いと思うよ。登録とかが面倒ていう感じだったらスマソ

   メンテ
1-2 Diskrimination ( No.4 )
日時: 2015/09/30 23:57 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

放浪者は公共設備を使用できないため、子供達は学校に行くこと
はできない。そのため、その子供達の学力は著しく低いが、時間
はたくさんあった為、近所の友達と遊ぶことがほとんどだった。
「山本翔平」という男の子もその中の一人だった。
翔平の父親は中小企業の社長であったが、柳の政策により会社は
倒産し、家族全員放浪者となった。翔平が五歳の時の事である。
放浪者の集まるスラムで生活する中で、翔平はある二人と出会う。
「坂口龍太」「法川美玲」の二人だ。
ちょうど翔平と同じ時期にスラムにやってきた龍太は、翔平の家
と家が近かったため、自然と関係が深まっていた。家に挨拶をし
に来た時にすでに仲良くなり、それから二人で遊ぶ事も多くなっ
ていった。いつの間にか二人は親友となっていた。

美玲は、二人が七歳の時にやってきた黒髪ロングの少女で、翔平
の家の隣に越して来た子である。最初は人見知りがちであったが
翔平と龍太からの猛烈な遊びの誘いの中から、次第に仲良くなっ
ていった。
8歳の頃には、三人はずっと一緒に居る幼なじみとなっていた。
   メンテ
1-3 Diskrimination(改) ( No.5 )
日時: 2015/10/01 18:18 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

三人が遊ぶところは決まって富豪層と貧困層を隔てる壁の近くに
ある空き地だった。他の子供たちはスラムの広場で遊ぶのだが、
美玲が遊んで汚れた姿を見られるのが恥ずかしいという理由で、
あまり子供が来ない空き地で遊んでいたのだ。翔平と龍太はその
広場にあちらこちらに落ちている廃棄物で自作の鉄棒やブランコ、
すべり台などを両親に手伝って貰いながら作り、そのうち空き地
は三人だけの特別な公園となっていた。三人は毎日のようにその
空き地で遊んでいた。

しかし、三人が10歳の時に突然悲劇はやってきた。
   メンテ
1-4 Diskrimination(改) ( No.6 )
日時: 2015/10/01 23:04 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

その日も朝方から三人で公園で遊び、帰ってきたのは暗くなって
来た頃。また明日も遊ぶ約束をして三人は別れたのだが、
その約束は守られることはなかった。
次の日、翔平は二人を連れいつものように朝飯のおにぎりを食べ
ながら歩いていると、空き地の方に人だかりがあるのを見つけた。
いつもなら人気もないのに何故?そう思った三人が駆け寄ると、
三人は驚き、開いた口が塞がらなかった。
空き地の近くにある壁が、直径4メートル程、崩れていたのだ。
そして、そばにあったブランコは支えを失って倒れていた。
崩れた壁の部分はブランコを支えるために、釘を打ち込んでいた
場所であったことを思い出すのもそう時間はかからなかった。
その壁は他の壁と比べ脆かった。だからそこに釘を打ったのだ。
壁の向こうはちょうど高級住宅街の広場があるようで、そこから
警察官やパトカーが集まり周辺の捜査していた。中には貧困層の
住民に事情聴取している警察官もいた。
三人は恐ろしくなりその場をすぐに立ち去ったが、目撃者の証言
等から犯人が特定されるのも時間の問題だった。
昼すぎに三人と三人の家族は拘束され、留置所に送られた。
   メンテ
1-5 Diskrimination ( No.7 )
日時: 2015/10/02 17:11 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

留置所には拘束の約一時間後に到着した。そこは都市のはずれに
ある留置所だったが、人気のある所だったため、三人達が乗った
車は、市民に不審な目を向けられながら留置所に入っていった。
三人が犯したのは、[貧困民不法侵入未遂罪]であった。
この罪は柳が首相就任後に新しく作られたもので、これを犯した
放浪者には懲役5年が課せられる。三人とその家族は壁を意図的に
壊し、侵入しようとした可能性があるということにより、それが
適用されたのだ。もちろん放浪者が何を言っても、検察官は耳を
貸さない。犯罪を犯した放浪者は、危険物質と認定され、人権が
厳しく制限されるという法律を、同時に柳が作ったからだ。
翔平達は拷問まがいな自白の強要を迫られ、諦めてしまった。
その後は刑務所に即刻送られるのだが、この罪にはある特殊な刑
法があった。それは、
「罪を犯した者の中に子供がいる場合には、両親が刑を肩代わり
する義務を負う」
というものだった。
柳の作った放浪者に対する刑法にはすべてこれが補足されていた
のだ。弄ばれているかのように、親と子を引き離す刑法をつくる
のも、柳の政策の一つだった。

   メンテ
1-6 Diskrimination ( No.8 )
日時: 2015/10/02 21:44 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

肉親との別れ。まだ10歳の子供にとってそれはとても辛い出来事
だった。三人はできる限りの抵抗をしたが力及ばず、留置所から
連れてこられた車に入れられ一時間後、三人の家にもどされた。
夏の終わり、やけに夜が涼しかった日だった。
三人は三日三晩泣き続け決心し、自分達で頑張って生き抜く事
を決めた。三人はその中で一番大きかった翔平の家で共同生活を
始め、家事を分担して生活した。少ない食材で食事をとる方法、
効率良くできる洗濯の仕方など、すべて自分達のせいで牢に入れ
られた両親達へのせめてもの親孝行と、他人に頼らない自立した
生活を心がけた。その生活は三人にとってとても過酷ではあった
が、弱音は吐かず、むしろ楽しんでいた。毎年やってくるお正月
や七夕、クリスマスは、プレゼントはないが貯めた少ない食材で
ご馳走を作り、賑やかな日々を送っていった。
誕生日は、プレゼントを二人で作って送る、一番楽しい日だった。
ーお母さん達が帰ってきたらみんなでお祝いしようー

三人がそう決心して時が過ぎた、翔平の19歳の誕生日が、

すべてが終わる始まりの日だった。
   メンテ
2-1 Irregularity ( No.9 )
日時: 2015/10/02 23:57 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

「翔くん誕生日おめでとー!」
夜中の平家に歓声が響く。
「おお、サンキュー」
「なんだよそのシケた返事、せっかくの誕生日なんだからハジけ
よーぜ!」
「そうだよ翔くん、いっぱい料理もつくったんだから楽しんでよ」
食卓には数は少ないが唐揚げやフライドチキン、手作りのケーキ
が所狭しと並んでいた。
翔平は誕生日が来る度に、美玲の料理の腕が着実に上がっている
ことに驚かされている。
「ほらほら、さっさと座って食べちゃってよ、龍太が唐揚げ全部
食べちゃうよ」
龍太はすでに唐揚げを3分の1ほど食べていた。
「ああ、そうするわ、いただきまーす」

美玲が料理の後片づけをして部屋に戻ると、二人はケーキ以外の
料理を全部食べてしまっていた。
「うわ・・・二人とも食べるの早くない?というか私の分は?」
「大丈夫ちゃんと残してあるから。ケーキはみんなで食べようぜ」
「さすがに食べ過ぎたか・・・あー腹いっぱいだわ」
翔平の誕生日のはずが龍太が一番食べていたため、龍太の腹は、
一目でわかるほど膨らんでいたが、ケーキを食べる為のフォーク
を片手に握りしめながら床に寝転がっていた。
「わかったわ、ナイフ持ってくるね。あとお皿も」
   メンテ
2-2 Irregularity ( No.10 )
日時: 2015/10/03 09:42 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

そう言い美玲は、ナイフとお皿を持ってくると、手慣れた様子で
ケーキを切り分けた。
「おい、なんか俺のケーキ少なくねぇか?」
「当たり前でしょ、そんなにたくさん食べたら龍太絶対吐いちゃ
うじゃない、それに今日の主役は翔くんなんだからね」
翔平のケーキは二人のと比べるとちょっとだけ大きかった。
「まぁ、いいか。今日は翔の誕生日、翔がいっぱい食べないとな」
「お前が言うな」
「ははは・・・なんでもいいから早く食おうぜ」 
ケーキはクルミを2枚のスポンジで包みクリームを塗ってイチゴ
を乗せたシンプルなものだったが、ケーキ自体食べることのほと
んどないこのスラムからしてみれば、とんでもないご馳走だとと
いうことは間違いなかった。
「じゃあ、いただきまーす」
「美味しいね、ケーキ」
「あぁ、いちご落ちちまったわ」
「俺が食べる」パクッ
「お、おいちょっとふざけんなよ」
「いいだろ、ケーキそっちの方が大きいんだからこのぐらいよ、
ケチくせぇなぁ」
「はぁ・・・本当呆れちゃう」



ケーキを食べ終わった後は、いよいよ翔平にプレゼントを渡す。
龍太は重い腰を上げ、プレゼントを持ってきた。
   メンテ
2-3 Irregularity ( No.11 )
日時: 2015/10/03 11:53 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

「なんか、やけに大きくね?それ」
龍太が持ってきたプレゼントは、直径が約30センチはある正方形
の木箱だった。中身は軽そうだが・・・
「まあな、一ヶ月前から準備してたんだぞ」
「お、もう龍太持って来たんだ」
なんだか二人ともニヤついている。去年の誕生日は、鉄くず集め
で貯めたお金でブロンズのブレスレットを買ってくれたが、
今年もアクセサリーなのだろうか・・・
翔平は二人から木箱を受け取った。
「じゃあ、開けてみて」
美玲に促され木箱を開けると、そこにはおもちゃの宝箱があった。
「え?なにこれ」
宝箱はプラスチックと木で出来ており、鍵穴が開いている。鍵は
掛かっているようで、宝箱を開けることは出来なかった。
「これ鍵掛けてあるから開けらんねえよ」
「これの事?」
美玲は手に持っている鉄の鍵を見せびらかした。
何のつもりだ?そう翔平が思うと二人はいきなり外に出た。
「私たちを捕まえたらこの鍵あげるよ」
「俺今腹いっぱいだけどお前には捕まえられないぜ」
なんだそういうことか。捕まえればいいんだな、一人は女、も
う片方は豚みたいな腹の男。楽勝だ。
俺は一瞬微笑むと、外に飛び出した。

その瞬間、轟音と地震が起こった
   メンテ
2-4 Irregularity(改) ( No.12 )
日時: 2015/10/03 15:00 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

「うわッ!なんだよこれ!」
その声さえかき消すほどの轟音。
数十秒間音が響き、轟音が収まった後、熱気が押し寄せて来た。
「二人とも、あ、あれ見て・・・」
美玲の指した方向で火山が噴火していたのだ。しかし、その規模
は異常だった。頂上や中腹の火口のみならず、山に大きな亀裂が
入り、そこから湯水のように溶岩が溢れだしていたのだ。溶岩流
が山を流れ地上に押し寄せてくるのもはっきりと見えていた。
だが、ここは噴火した山から何キロも離れたところなのだから
、こちらまで溶岩が来ることはさすがにないだろう、と翔平は
考えていたが、龍太の一言でそれが大きな間違いだということに
気がついた。
「お、おい、あの山からつながってる川がここの近くにあったよ
な、そこから溶岩が流れてきたり・・・しないか?」
龍太の不安は的中した。富豪層内の警報放送が流れ、その内容は、
[溶岩流が河川に沿って押し寄せています、ただちに避難してく
ださい。繰り返します、溶岩流が河川に沿って押し寄せています]
富豪層もスラムもパニック状態に陥っていた。翔平は冷静に判断
して、腰を抜かしている二人に落ち着くように求めた。
   メンテ
2-5 Irregularity ( No.13 )
日時: 2015/10/03 15:38 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

「ちょっとお前ら落ち着け大丈夫だ、高い所に避難すりゃ溶岩は
流れてこない、早く行こう」
「わ、わかった、早く行こう」「そう、そうね、落ち着かなきゃ」
ようやく落ち着きを取り戻した二人と翔平はスラムの中にある小
高い丘を目指して走っていった。途中、他の避難者もそこについ
ていくことになり、ペースは落ちたが、なんとか溶岩流がスラム
に到達する前に、避難することができた。
その丘は、貧困民に配給する食料の倉庫があった。普段は警備員
が見張っているが、この緊急事態で退避したらしく、倉庫の鍵は
開いたままだった。避難者はその中で生活する事になりそうだ。

一通り落ち着き、時間が出来た翔平は丘から河川を見下ろした。
溶岩流はすでにスラムの一部に流れ込んでいた。ここのスラムは
盆地になっているため、そのうちに溶岩ですべて埋もれてしまう
だろう。
「ひ、ひどい・・・私達の家が・・・」
美玲はこの有り様をみて泣いていた。十何年間も住んでいた所の
あまりにも酷い最期を目にしたのだから無理もない。
それはそうと、富豪層の連中はどうしたのだろうか。
今では放送も何も聞こえてきていないのだが・・・
   メンテ
2-6 Irregularity(改) ( No.14 )
日時: 2015/10/03 16:36 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

突然の火山の噴火、押し寄せてくる溶岩流から逃げてきた翔平達
を含む避難民は食料倉庫の中で一晩を過ごした。大半は火山から
の熱風や恐怖、緊張からか眠れない者が多かったが、朝を迎える
と、この事態を受け入れる覚悟が出来たようだ。
火山は未だに活動が非常に活発で、火山灰や火山岩塊があちら
こちらに降り注いでいる。
スラムは、すでに半分が溶岩に飲まれていた。溶岩がすべてを飲
み込むまでもう時間の問題だ。
二人はまだ倉庫で休んでいる。美玲はかなり憔悴しているから、
しばらく一人しておいたほうが良さそうだ。
翔平がそんな事を考えながら外を観察していると、かすかにプロ
ペラの音が聞こえてきた。翔平があたりを見渡すと、富豪層の方
から、ヘリコプターとチヌークヘリがやってきているのが見えた。
倉庫からも、その音を聞きつけた避難民がぞくぞくと出てきた。
丘の端に着地した航空機からでてきたのは軍人達だった。軍人達
は、避難民にチヌークヘリに乗るように指示した。
翔平は二人を倉庫から連れ出した。
「救出用のヘリが来たぞ、早くしろ」
「うーん、わ、分かった」
避難者を乗せた航空機は、仮設避難所に進路を向け出発した。
   メンテ
2-7 Irregularity ( No.15 )
日時: 2015/10/03 23:39 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

チヌークの中には、翔平達を含め三十人ほど避難民が乗っていた
が、会話は一つもなく、ピリピリとした空気が張りつめていた。
隣に座っている美玲は虚ろな目で一点を見つめていた。昨日まで
はあんなに元気だったのに・・・
プレゼントも家に置いてきてしまい、結局開けることも無かった。
ここまで誕生日が憎かったことが今までにあっただろうか。そん
なことを考えているうちに、チヌークは目的地に到着した。次々
と降りてゆく避難民の後、寝ていた龍太を起こし、美玲を立たせ
翔平はチヌークを降りた。
周りを見た瞬間、身体が固まった。
「嘘だろ・・・ここ刑務所じゃねえか」
そこは、もう使用されていないであろう、古びた刑務所だった。
無機質な色の建物、高く延ばされた有刺鉄線は、まるで自分達が
囚人に感じられるほどの雰囲気を醸し出していた。
そこに、軍人の脅しめいた声が響く。
「今日からおまえ達はしばらくここで生活してもらう」

おいおい・・・本当に囚人みたいじゃねえか。
   メンテ
2-8 Irregularity ( No.16 )
日時: 2015/10/06 03:56 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

「今日からおまえ達はしばらくここで生活してもらう」
街外れの刑務所にその声が反射する。
「ここは今は使用していない刑務所だ。寝る所は牢屋になるが、
カーテンを希望者に配布するから名乗り出るように」
軍人がカーテンを希望者に配布し終わったあと、皆外にあるヘリ
に向かうため外に歩き始めた。そして、刑務所の門から最後の
一人が出ていくと、軍人は門の鍵を閉めた。
避難者は驚き、外の軍人達に詰めかけて開けるように求めたが、
「ここは外れにあるが立派な富豪層のエリアなのだ、貧困民であ
るお前らが自由に行き来できる訳がないだろう」
軍人はそう言いヘリへ乗り込んでいった。
災害時にもその差別は無くならない事を身を持って感じた瞬間だ
った。
   メンテ
2-9 Irregularity ( No.17 )
日時: 2015/10/06 23:21 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

三人は刑務所の三階の端にある牢屋をとって暮らすことにした。
牢屋の中は簡易ベットが三つ、机と椅子、トイレという寂しい
部屋だったが、そこで何とか暮らせるように初日に掃除をして、
綺麗にすることができた。食事は前と同じように配給で回る。
「この部屋狭すぎだ、床も石畳だしつっぷして寝れねえだろ」
龍太はこんな所に連れてこられても基本の生活スタイルは変わら
なかった。毎日毎日食い物食っては寝るを繰り返している。
「いつも食べては寝てって、まるでブタみたいね」
美玲はまだすこし疲れていそうだが、前よりは元気を取り戻して
いた。
いつもの三人の雰囲気になってきてホッとしていた。


それから一ヶ月後、昼間ヘリの音が聞こえ、翔平が格子から目を
やると、それは避難民たちが運ばれたチヌークヘリの音だった。
そこから数人の軍人が現われ、刑務棟の中に入っていった。


そして数分後、三人は手錠をはめられてヘリに収容された。
軍人の手には三枚の書類があった。その紙によって三人はここに
いる。

"徴集書"
   メンテ
2-10 Irregularity(改) ( No.18 )
日時: 2015/10/07 21:54 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

「何処に連れてくんだよ、教えろ!」
チヌークの中に龍太の叫び声が響きわたる。
三人は昼飯を食べていた最中に拘束された。何がどうなっている
のか見当もつかないでいた。軍人達は龍太の訴えに耳を貸さない
まま二時間以上が経過し、日が傾き始めていた頃、一人の軍人が
口を開いた。
「後ろの窓から下を見ろ」
三人は不思議におもいながら後ろを向き窓を覗いた。
「えっ!?」
「な、なんだよ・・・これ」
まさに地獄とも言えるその環境を見た三人はあぜんとした。
前の火山だろうか、溶岩が山からとめどなく溢れ、地面に開いた
けた外れの大きさの亀裂に流れ込んでいた。
植物や水はすべて枯れ、人も見あたらない。
「三人でこの危機的状況から地球を助ける任務を遂行してもらう」
「「「は?」」」
三人にその宣告がなされた瞬間チヌークは謎の建物のヘリポート
に着陸した。三人はチヌークから降ろされて建物の中へ連れてい
かれた。
翔平は建物の看板を見ていた。そこに書かれた物を見て、翔平は
首を傾げた。

[リフォーミング・アース日本支部]
   メンテ
2-11 Irregularity(改) ( No.19 )
日時: 2015/10/09 17:31 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

建物の中は、白黒を基調とした無機質な雰囲気を漂わせていた。
すれちがう人々は白衣を着ていて、少し薬臭かったから、ここは
研究所なのだろうか・・・
そう考えていると先導していた軍人が歩を止め、口を開いた。
「着いたぞ、中に入れ」
軍人は樫の木で出来たドアに手を向けた。翔平は、そのドアノブ
に触れ、ゆっくりと開いた。
「お、やあ、よくきたね君たち」
その部屋には5メートルはあるであろう本棚と、馬のなめし革で
作られたソファが置いてあり、前に置いてある机には茶菓子が
あった。そして部屋の中央にとても大きいデスク、整理整頓され
たデスクの向こう側に男がいた。
「あんた誰だ、俺らを早く返せ!」
「おお、威勢がいいねえ、これならよく働いてくれそうだ」
龍太が怒声を散らしても男は、澄まし顔で流した。
「君たちには、これからある任務についてもらうんだ」
男の口角が少し上がった。
   メンテ
3-1 Ordeal(改) ( No.20 )
日時: 2015/10/11 00:21 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

任務?
「僕はここの施設長の前田友賀という者だ、よろしく」
前田は笑みを浮かべていた。
「任務って、何・・・?」
美玲が怯えた口調で話した。
「ん、ああ、まだ詳しく説明していなかったようだね、君たちに
は、この星を守る為の重要な任務をしてもらうんだ」
「え・・・」
また星を救うというその発言に三人は驚きを隠せなかった。
「まあ無理もないか、まだ話を飲み込めていないんだろう、さあ
、立ちっぱなしなのもアレだから、とりあえず座って話そうか、
君たち、腕のを外してあげて」
「はっ」
軍人達は短い返事の後、三人の手首の手錠を外した。三人は前田
が指したソファに座った。
「さてと、とりあえず今は説明だな。君たち、先日の火山の噴火
のことは知っているかい?」
「知っているも何も、あの噴火のせいで、俺達は刑務所に居たん
じゃないか」
翔平は責めた口調で話した。
「はは、そうだったね、ということは噴火している火山も見たと
いうことだね?何かおかしい事があったろう」
翔平の頭に異常な火山の噴火の情景がよぎる。
「たしかにあったけど・・・それがどうかしたんだよ」
「いやー、それがまずいことになったんだよ」
まずいこと?
   メンテ
3-2 Ordeal(改) ( No.21 )
日時: 2015/10/11 02:05 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

「実を言うと、アレは人工的な噴火だったんだ」
「は?」
前田はそう言うとデスクから一つのファイルを持って来て、中に
挟まれているレポートの一枚を机に置いた。
「この実験レポートを見て欲しい。これは、[溶岩の燃焼による
エネルギー無限供給システム]を作るための実験のレポートなん
だけど、これの最終実験が失敗してしまってね、この有り様さ。
それにこの実験は日本で行われてたわけではないんだ。まったく
無関係の日本にもこんな被害が来たという事は・・・
もう分かるだろう?今地球全体が崩壊の危機に直面しているんだ。
だから貧困民の中から、この危機に対処してもらう人を選ぶこと
になって、それが君達なんだ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、何?地球が崩壊って」 
翔平達はあまりに急なその宣告にあぜんとしていた。
「だから要は、地球が今すごく危ないから君たちに助けて貰おう
ってことだよ」
三人は冷静さを取り戻し、かつ恐怖にうちふるえていた。
地球が、崩壊する・・?
だが翔平はそれよりも疑問に思っていることがあった。
「おい、ならなんで俺達なんだよ、貧困民だって他にもいただろ
う」
「あぁそれはね、君たちが天涯孤独の身だからだよ」
   メンテ
3-3 Ordeal ( No.22 )
日時: 2015/10/11 16:41 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

「天涯孤独って、俺達には母さん達がいる!」
翔平は怒りを込めて反論した。しかし前田は平然としている。
「そのお母さん達は、捕まっていたんじゃあないのかい?」
「ああ、そうだよ、それがどうかしたんだ」
微かに前田の眉が上がった。
「君たちの両親は、一昨日で全員死んでしまったんだよ」
その瞬間、三人の目から輝きが消えた。そして一番最初に憎悪が
目に映ったのは龍太だった。
「何しれっと言ってんだよボケが!」
龍太は前田に掴み掛かろうとしたが、背後に居た軍人達によって
引き戻された。
「別に僕たちが殺した訳じゃないし怒らないでくれよ」
前田は冗談めかしていった。
「まあ、急にそんなこと言われても受け入れられないよね、今日
の所は、用意している部屋で休んでてくれ」
軍人達は三人を部屋に連れていった。
   メンテ
3-4 Ordeal ( No.23 )
日時: 2015/10/12 23:46 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

突然の肉親の死の宣告。翔平は、用意されていた部屋のベットに
へたれ込んでいた。
ー母さんたちが、死んだー

気がつくとすでに日が昇っていた、寝てしまっていたようだ。
一晩寝たら心が少し落ち着いた様だ。
ベットから這い出ようとしているとドアからノックがした。
「目が覚めたか、起床しだいに朝食がくる。食い終わったらまた
施設長の元に謁見しにいくから準備するように」
昨日の軍人の声だった。翔平は、寝起きの鈍い返事をして朝食が
来るまでに支度を済ませた。支度が済んだ翔平が寝室に戻ると、
またノックがした。
「山本翔平様、朝食をお持ちしました」
さ、様?
翔平は不思議に思いながらドアを開け、目の前にいたメイドさん
から朝食を受け取った。ロールパンにコブサラダ、コーンポター
ジュにマスカットティーという朝から豪華な食事に驚き、そして
富豪層と貧困層の差を見せつけられたような気がした翔平は複雑
な気持ちだった。

翔平が朝食を済ませ、片づけ終わると、軍人が部屋に入って来て
時間だと言った。
翔平は前田の部屋に向かった。
   メンテ
3-5 Ordeal ( No.24 )
日時: 2015/10/13 00:10 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

前田の部屋に向かう途中に、二人と合流した。翔平は二人に少し
違和感を感じた。両親が死んだというのに嘆いている様子がまっ
たく見えないのだ。どうしたのだろうか・・・
前田の部屋に着いた三人はノックをして、部屋の中に入った。
「おはようさん、昨日は良く眠れたかい?」
「いいから昨日の話の続きを話せ」
龍太が威圧していた。
「おー怖い怖い、いいだろう、話の続きをしようか。昨日も繰り
返し言ったんだが、任務を遂行してもらう人を貧困民から探そう
ということはもう知ってるよね?ちょうどそのタイミングで君達
の親が死んでしまったから、丁度いいと思った本部のお偉いさん
達が君たちを召集したってわけさ。わかってくれたかい?」
翔平はそれに納得して、次に核心に迫る発言を口にした。
「ああわかった、それで俺達は何をすればいいんだ、目的が無け
れば話にならないだろう」
「君らには少し遠出して、データの採取や、その他諸々の任務を
してもらうんだ。それを、地球を復元させる研究に使うんだよ。
かなり重要な任務なんだ」
「そこらへんは良くわからないけど、私達何も出来ないわ、訓練
も何も受けてないのに」
美玲が当然な疑問を話した。
   メンテ
3-6 Ordeal(改) ( No.25 )
日時: 2015/10/13 00:35 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

「そこは心配しなくて大丈夫だよ。ウチのエンジニアに身体能力
を増強させる装備を作らせておいた。君らはそれを装備した状態
で少し体を慣らしてもらい、こちらのテストに合格してもらえれ
ばいいんだ。なーに、そんな難しいテストじゃないから安心して
くれよ」
「不合格だった場合はどうなるんだ?」
前田の目が鋭くなった。
「もちろん、あの避難所に帰る事はできないよ。本物の刑務所で
労働だ。なんせ、国家機密だから公にしてもらうと困るからね」
一か八かのこの状態の中、龍太が口を開いた。
「さっさとそれ持ってこい、絶対合格してやる」
それに乗るように美玲も覚悟を決めたようだ。
「ええ、早く持ってきて」
翔平もうなずいた。
「OKだ、ついてきてくれ。あと、君たちはここで待っててくれ」
前田は軍人達を部屋に待たせて、三人を連れて部屋の中のエレベ
ータに乗り込んだ。
下降してしばらく経って、[B3]とモニターに映り、ドアが開いた。
そこは青白いテクノ感の溢れた実験室だった。
   メンテ
3-7 Ordeal(改) ( No.26 )
日時: 2015/10/15 22:35 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

「ここを見てしまった以上、もうあそこには戻ることはできない
から、諦めてくれ」
前田はエレベーターから降りる時に呟いた。
実験室と思われるその部屋は、縦に細長く伸びた廊下のような
形をして、両端で研究員らしき人々が作業をしていた。その部屋
の奥には扉が二つあった。三人は前田に先導されて片方の部屋に
入った。
「これが、さっきも言った君たちの装備だ」
狭い部屋の真ん中の解剖台らしき物の上にそれはあった。前田の
説明が始まった。
よく軍隊が使うヘルメットに、ナイトビジョン、サーモグラフィ
、無線と呼ばれる類の多彩な機能が付いたヘルメット、
外気の温度を伝えない特殊なチタン合金とカーボンナノチューブ
の繊維で編まれたというチョッキにジャケット、レギンスに、
アクリル樹脂の滑り止めコーティングが施され、腕にモニターの
付いたグローブ、
衝撃を吸収、放出する新素材が挟み込まれた、厚底のブーツ。
しかし、総重量は3キロ前後という軽さ、世界中から集められた
最高のエンジニア達の最高技術の結晶だと言われた。
「すげぇ……」
翔平たちの口からそんな声が自然と漏れ出ていた。
   メンテ
3-8 Ordeal ( No.27 )
日時: 2015/10/17 23:20 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

「はは、驚いたろ、君たちにこれを着てもらうんだ」
前田は三人に装備を渡した。
「でも何処で体を慣らすんだよ」
「ああ、こっちに来てくれ」
前田はそう言うと部屋から出て、もう一つの部屋に入っていった。
三人もそれについていく。
その部屋には一つのモニターとスイッチやマイクの付いた機械、
そして一人が入れそうなカプセルのような物体が三つあった。
前田は部屋にあるモニターの電源を付け、椅子に腰掛けた。
「ここからは僕が無線で説明する。スイッチをオンにして、その
転移装置に入ってくれ」
前田はカプセル状の物体を指さした。
「転移……?危ないことはないでしょうね?」
「大丈夫、動作は確認済みだよ」
前田にそう言われ、三人は転移装置に入った。
「じゃ、いくよ」
前田は機械に付いた一つのスイッチを押した。
その瞬間カプセルが閉まり強い閃光がしたと思うと、すでに三人
の姿は無くなっていた。

「なっ…ここ何処だよ…」
前田がスイッチを押した瞬間、目の前がホワイトアウトした三人
は、いつの間にか障害物のある白く広い空間にいた。
あぜんとしていると、聞き慣れた声がヘッドホンから聞こえてき
た。
「あーあー、聞こえるかい?」
   メンテ
3-9 Ordeal ( No.28 )
日時: 2015/10/21 00:41 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

「うわっ!!」
龍太はいきなり声が聞こえたのに驚いたのだろう、尻餅をついて
いた。
「ああ、聞こえる」
「よし、okだ。説明するから耳の穴かっぽじってよく聞いてよ」
前田の説明が始まった。
このホールは建物の地下深くにあるもので、ギミックなどが設置
されている練習場であるそうだ。そのギミックは研究者達が発明
したリアル・ホログラムと呼ばれるもので、空気中に漂っている
原子や分子を凝縮させて物質や対流を起こすことのできる技術で
、これを使って障害物や激しい天候の変動を再現し、人体の耐性
をつけたり、効率よく任務を進めるための訓練をするらしい。
ここには人体の皮膚を硬質化させる気体を放出しているため怪我
はしないのだという。
「説明はこれで終わりだがどうだ?一度やってみるか?」
前田は説明を終えた後聞いた。
「俺はやってみたいが…二人はどうだ?」
「当たり前だ、やってみるに決まってる」
「私もだわ」
三人の返事を聞いた前田は笑った。
「わかった、訓練を始めようか。内容やギミックの配置僕が決め
るが覚悟して、僕は意地が悪いからね。目標は、そうだねえ…散
らばった鍵を障害物を避けて集めるってことで、よし、スタート」
   メンテ
3-10 Ordeal ( No.29 )
日時: 2015/10/21 23:52 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

前田の合図が聞こえた瞬間、ホールの中にキラリと光る物が空中
に現れた。あれが鍵のようだ。
「1、2、3…全部で6個だ、行くぞ!」
翔平達は鍵に向かって走り出し、一番低い位置にある鍵めがけて
思い切りジャンプした。装備を着ている時は跳脚力が増強される。

ゴキッ

翔平は飛びすぎて天井に思い切り頭をぶつけた。そしてそのまま
地面に落下した。
「痛ったぁ…」
翔平だけではなかった。龍太はギミックの鎖に巻かれて身動きが
取れなくなっていたし、美玲はよほど面白いのか、ジャンプして
遊んでいる。
「十秒も過ぎないうちに失敗するとは…大丈夫か?」
前田は心配の入り交じった声で呟いた。
「こ、これから練習するから大丈夫だよ」
名誉挽回だ。
「当たり前だよ、練習あるのみだからね」
   メンテ
3-11 Ordeal ( No.30 )
日時: 2015/10/23 23:01 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

前田の指示に従って、三人はホールから部屋に転移した。前田は
腕を組んでこちらを見つめていた。
「おかえり三人とも。最初のデモンストレーションは、見事に…
失敗に終わったね。まあ練習を積み重ねてゆけばそのうち上手く
なるさ」
三人は落ち込んだ返事をした。前田は別の用事があるということ
で、三人も解散することになった。軍人達の監視のもと翔平は、
部屋に戻り夕方まで自室に備え付けられたものを一通り確認した。
昨日はシャワーと寝室しか触れていなかったため気づかなかった
が、クローゼットやタンスはもちろん、冷蔵庫やテレビ、小説も
置いてあった。翔平は夕飯とシャワーを済ますとソファに横たわ
り、深い眠りについた。

次の日の朝、メイドさんのノックで目を覚ました翔平は気合いを
入れた。
今日から本格的な訓練が始まる。
着替えと朝食を済ませ、ホールへ向かった。
   メンテ
3-12 Ordeal ( No.31 )
日時: 2015/10/26 20:42 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

三人は途中で合流し、前田の部屋に入った。
「おはよう。今日から本格的な訓練に入るが、覚悟はできてるか
い?」
三人はうなずいた。
「よし、なら始めるとしようか、ついてきてくれ」
前田は立ち上がりホールへ向かっていった。三人もそれについて
いく。


それから約2週間が過ぎた。
この2週間である程度の移動が出来るようになり、また搭載され
た装備の操作にも慣れてきていた。三人も自分達の成長を気づい
ていた。
ある日、訓練後に三人は前田から呼び出しを受け、前田の部屋に
向かった。
「来たね、疲れてるだろうけど重大な話があるんだ。そこに座っ
てくれ」
「何の話だよ」
龍太はめんどくさそうにしていた。
「君達がここで訓練を始めてから1、2週間経つんだろ、昨日の
会議でそろそろテストをやってもいいんじゃないか、という意見
が出て可決されたんだ。ということで、明日か明後日にでも行う
ことになったということを伝えたかったんだ」
やっときたか、この時が。三人は唾を飲み込んだ。明日、明後日
にテストが行われ、不合格者は本物の刑務所におくられる…
   メンテ
3-13 Ordeal ( No.32 )
日時: 2015/11/24 23:48 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

「……で、明日の君達の健闘を祈る」
そういって前田は帰っていいことを命じた。既に日は沈んで、空
に赤みが掛かっていた。
もう時間はない。明日を万全な調子で迎えるため、三人は部屋に
大急ぎで戻り、装備の点検、翔平はイメージトレーニングをして
いた。
明日、テストに落ちれば一巻の終わり…
翔平はハッと頭を振った。
テスト前からこんな事を考えているのは良くない。今はとにかく
明日のテストを無事に乗り切ることだ。二人も、無事に合格する
ように祈ろう。

そう思いながら、腰掛けていたベットに横たわり、翔平は眠りに
ついた。

太陽が、既に真上に昇っているころに、三人はテスト会場となる
トレーニングルームに居た。
無線から声が聞こえる。
「これから君達のテストを行う。一生懸命力を尽くすように」
翔平は二人と目を合わせ頷いた。
「最初は、この前と同じの、空中に散らばった目標を採取する、
エアー・ターゲット・キャッチだ」
三人は体勢を整える。
「よーい、始め」
前田の呼びかけと同時に空中に目標が浮かび上がった。
   メンテ
3-14 Ordeal ( No.33 )
日時: 2015/11/25 00:15 (dion)
名前: 蜘蛛◆k4P7BblWhnk

同時に三人は駆けだした。
翔平は近い二つの目標を両腕で鷲掴みにし、龍太は一つずつ確実
に採取していく。美玲は高所にあるターゲットをしっかり採取し
ていく。
数十個はあっただろうターゲットは、わずか二十秒足らずで全部
消えていた。
「やはりか…僕の目に間違いは無かったようだ」
前田は呟き、無線から第一テスト終了の合図を出した。
三人は目を合わせた。
「体がいつもより軽いぞ…」
「確かに俺も感じる、美玲もか?」
「うん…なんだか自分が自分じゃないみたい」
「まあ、とにかくクリアした、次のもこの調子で頑張るぞ」
二人は返事をした。前田の声が聞こえる。
「次はチェイス・ウォール・ラン、迫ってくる壁から十キロ逃げ
延びられたらクリアだ。途中にギミックも配置する。瞬発力と、
判断力が必要だ」
そう聞こえると三人は自動的に転送され、細長く延びた一本道が
どこまでも続いているようなルームに居た。
後ろには電気を纏ったような金属の壁が佇んでいる。
「よーい、始め」
同時に壁が、時速二十キロ程の速度で動き出した。
装備で脚力が強化された三人は一本道を猛烈なスピードで、走り
出した。
   メンテ

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