言葉の魔力
ピュアハート・カウンセリング
心理カウンセラー・田中順平さん
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1.気持ちを表す「○○したい」
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「○○したい」は、魔力を持った言葉です。「○○したい」と口にすると、あたかもそれを自分の本当の望んでいるかのように錯覚させられてしまうところがあるからです。
私たちは、「○○したい」という言葉を、普段の生活の中では「ご飯が食べたい」とか「早く寝たい」とか「トイレに行きたい」・・・といった感じに使います。これらは、その時々の望みだと理解してほぼ間違いないでしょう。ですから、私たちが、『「○○したい」という言葉は、全て自分の望みを表わしている』と思い込んでしまうのは当然のことかもしれません。
「○○したい」は、そのような雰囲気がある言葉ですから、「死にたい」と聞くと、本当に死ぬことを望んでいると思っても仕方ないところはあります。 ***********************************************
2.修飾語としての「○○したい」
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しかし、「死にたい」という言葉は、少しニュアンスが違います。これは、もともとの文章の大部分が省略され、その一部分だけが切り離された言葉なのです。省略前のもともとの文章は、おおよそ次のようになります。
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【もともとの文章】
「死にたい」と思うほど苦しい。もっと、楽に生きたいよ!誰か助けて!
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つまり、もともとは、「死にたい」は苦しさの程度を表わすための『ただの修飾語』で、本当の望みは「楽に生きたい」ということなのです。心から死にたいなどとは願っていないのです。
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3.死ねば心の苦しさは本当に解決するの?
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現代社会においては、心を楽にする方法が明確に示されていません。それらしい情報はあふれかえっているのですが、心の苦しさを本当に解決できる情報には、滅多に巡り合うことができません。そんな中でも、「死にたい」と口にするようになった人は、きっと、自分の問題を解決しようと、必死に努力をしてきたことだと思います。それにも関わらず、楽になれずに行き詰まってしまったら、最後に残された解決策は死ぬことしかないと思えてしまうことは理解できます。
しかし、「死んだら楽になる」ということは、科学的には立証されていません。私は、「死ねば楽になるかもしれないし、死んでも苦しいままかもしれない。現在の科学では、それを確認することができない」というのが、科学的な理解だと考えています。ところが、現代社会には「人は死んだら消えてなくなるのだから、心の苦しさも消えてなくなる」と漠然と信じている雰囲気があり、苦しさを解決する最終手段を死ぬことだと考えてしまい易いところがあるのです。
このようなことから、苦しさが極限に達した気持ちを、最終的な解決策である「死にたい」という言葉で修飾するようになったのだと考えます。 ***********************************************
4.本当の解決方法はある!
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もともとは苦しさの程度を表す「死にたい」という言葉ですが、それを繰り返し口にしている内に自己暗示に掛ってしまい、やがて、それが自分の本当の望みだと錯覚してしまうようになります。
しかし、『どんなに心が苦しくなっても、心の苦しさを確実に解決する方法がある』となると、みんなの考えは一変するはずです。そして、心の苦しさを解決する方法は、実際にあるのです。それはとても単純なことです。複雑な過程を経る必要などありません。
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【心の苦しさをスッキリとした気持ちに回復させる方法】
■誰かに、本当の気持ちを素直に話す。
■誰かの胸の中で(或いは、膝を借りて)、「苦しい」と言ってスッキリするまでオイオイと泣く。
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たったこれだけのことです。たったこれだけのことで、苦しくなった心を楽にできるのです。逆に、これ以外のことをいくらやっても、スッキリとした気持ちに回復することはないと言っても過言ではないのです。 ***********************************************
5.なぜ、本当の解決方法は浸透しない?
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そんな簡単なことなのに、人々には浸透していきません。その理由を説明します。
まず、心に苦しみを抱える人の多くは、「誰かの胸で泣くとスッキリした気持ちになる」ということが解決策になるとは思いつかないからです。
次に、これまでの人生の中で「人に頼るな、強くなれ」などと、それ以外のことで解決しろと叩き込まれてきたことも影響しています。「スッキリするまで泣くことが本当の解決策だ」と教えられても、「それは答えではない」と反射的に反応してしまうくらいに洗脳されています。
更に、「これまで散々努力しても解決できなかった心の苦しさが、そんな簡単なことで解決するはずがない」と考えて、これまでと同じように、それ以外の方法で対処しようとしてしまうところもあるからです。
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6.本当の解決のために
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繰り返しますが、「素直な気持ちを話し、誰かの胸で泣く」ということが、心の苦しさをスッキリと解消できる唯一の方法です。この方法で心の苦しさを本当に解決できると知れば、苦しい気持ちを表現する文章も変わってきます。
【旧】「死にたい」と思うほど苦しい
【新】「誰かの膝を借りてオイオイと泣きたい」と思うほど苦しい。
そして、これが社会の中で『苦しさの度合いを表す最上級の言葉』として受け入れられると、苦しさの極限に達した人の言葉は次のように変わるはずです。
【旧】死にたい
【新】誰かの膝を借りてオイオイと泣きたい
つまり、これまでの「死にたい」に代わって、「誰かの膝を借りてオイオイと泣きたい」という言葉が繰り返されるようになるのです。
このように言葉を正しくするだけで、苦しくなったときは「誰かの膝を借りてオイオイと泣きたい」と願うようになり、それを実践することにもつながります。その結果、楽な気持ちを取り戻すことができるのです。 ******************
【補足】
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「友達がいないから、そんなことできない」と感じる場合は、次の記事が参考になると思います。
■ブログ:読むカウンセリング:「子供に『友達』という言葉をあまり刷り込まない方が良いと思うのです…」
http://yomu-counseling.blogspot.jp/2009/10/blog-post_30.html 「心の苦しさを解決する流れ」をもう少し詳しくお知りになりたい方は、次のサイトをご覧下さい。 ■カウンセラーじゅんさんのコンテンツ紹介ブログ
http://d.hatena.ne.jp/pureman/
(2009年12月9日 ピュアハート・カウンセリング http://www.pureheart-counseling.com/)
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